
素敵な朝を迎えた。というのは真っ赤な嘘で、「名医先生」を読みながら悶々とした夜を過ごした後の朝。依然として、出すべき答えが見えない。何かが引っ掛かっている。しかし、今日は打ち合わせなのでそれまでに自分なりの答えは示さねばならない。午前中、とにかく「名医先生」を読み直しながら、悪戦苦闘する。
気持ちを切り替えて、トーストを焼きながら紅茶を啜る。バターをトーストに乗せて、バターが溶けてゆくのを眺める。そのうちに何かがひらめく。というか頭と体が芝居モードに入る。そしたら一気にイメージが湧いてきた。そういうことだ。人間の息遣いが何もかもの始まりなのだ。
チェーホフという人物の息遣いに倣えばいいだけだ。そこにやっと辿り着いた。辿り着いてみれば段々と風景が見えてくる。
夜はルーサイトに出向き、芝居をみる。これがとても素敵な作品だった。才能ある人が小振りだけど心温まる芝居を作っていた。これが、見たかったんだよなぁとつくづく感じた芝居だった。