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日々是好日

このページでは、酒井が日々感じていることをコラム風に書き綴っていきたいと思っています。

#3・世界は生物の中

僕は幼少の頃から、自分が居るこの世界は、何かしら大きな生物の中にあるのではないか、という感覚を持っている。もちろん漠然としたものであり、他人に指し示す証拠などは挙げられないのだが、何かこう肌で感じる実感が、ある。
動物がいて、植物がいて、鉱物があって、と僕らの世界には自分自身も含めて様々な存在に満ちている。空気があり、水があり、大地がある。有機物、無機物、それら全てをひっくるめて、とにかく存在している。そして細かく見て、例えば原子レベルで見るならば、止まっている存在はないとも言える。絶えず変化を続けている。一つの有機体として死んでしまったように見える存在でも何処かには向かっている。腐敗も変化の一過程だろう。こういう見方を強くすると、「死」という言葉が持つ、「停滞」なり「消滅」の語感が薄くなっていく気が、いつもする。
で、夜空に煌く星々を見ていると、それらは、僕らを包み込む大きな生物の神経細胞なんじゃないかなあ、とよく考えたりする。名状し難い大きな存在の神経の断面なのではないかと、結構本気で思っている。ぼくらがその星たちを見上げた時、その神経細胞を通じて、大きな生き物と僕らが会話している気分になってくる。
そして、その反動として、自分の体の内部にももしかしたら、僕らが存在の場として認識しているこの世界のような世界が、あるのではないか、などとも考える。僕自身のささやかな心的状態などとは一見無縁な小さな世界が、この身体の中に無数に存在していて、時にはその世界の住人たちと会話しているのではないか、と勘ぐっている。
もし本当にそうだったら、僕は素直に嬉しく感じるだろう。

2022.4.17

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